最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「HANALEI」は、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当しない、と判断された事例
(不服2019-6171、令和2年1月9日審決、審決公報第242号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「HANALEI」の文字を標準文字で表してなり、第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」を指定商品として、平成29年11月9日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要点

 原査定は、「本願商標は、『HANALEI』の文字を標準文字で表示してなるところ、当該文字は『米国ハワイ州、カウアイ島北部の町』の名称を表すものであって、我が国において観光地として知られている実情がある。そうすると、本願商標は、『ハワイのハナレイ』を認識させるものであり、これをその指定商品に使用したときは、その商品がハワイのハナレイで生産された、又は販売される商品であることを認識させるにとどまるものであるから、本願商標は、単に商品の産地、販売地、品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものといわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、その指定商品中、ハワイのハナレイで生産された、又は販売される商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、前記1のとおり、「HANALEI」の文字を標準文字で表示してなるところ、当該文字が、アメリカ合衆国ハワイ州のカウアイ島北部の地区の名称を表したものであるとしても、我が国において、一般に広く知られているとはいい難い。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「HANALEI」の文字が、商品の産地、販売地、品質を表示するものとして、一般に使用されている事実は発見できず、さらに本願商標に接する取引者、需要者が、当該文字を商品の産地、販売地、品質を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の産地、販売地、品質を表示するものとはいえず、かつ、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるものということもできない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「忖度」は、商標法第3条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2019-7900、令和2年1月7日審決、審決公報第242号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「忖度」の文字を縦書きしてなり、第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ」を指定商品として、平成29年6月16日に登録出願されたものである。


2 原査定における拒絶の理由(要点)

 原査定は、「本願商標は、『忖度』の文字を縦書きしてなるところ、該文字は『他人の心中をおしはかること。』等を意味する語である。また、該文字は、森友・加計学園問題を象徴するキーワードとして知られるようになって、不特定多数の者が商品・サービスの販売や広告等において多用し、加えて、2017年ユーキャン新語・流行語大賞において年間大賞にも選ばれたことから、流行語として、広く一般に認識されている語である。さらに『忖度』の文字は、本願商標の指定商品を取り扱う業界において、商品の宣伝文句の一部として使用されている実情が認められる。そうすると、『忖度』の文字自体は、流行語として認識されるほか、商品の宣伝において使用される語句の一つと認識されるにとどまるものといえるから、本願商標をその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当であって、需要者をして何人かの業務に係る商品であるのかを認識することができない商標を普通に用いられる方法で表したにすぎないものといわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。なお、たとえ請求人が、『2017ユーキャン新語・流行語大賞』において『忖度』の語で表彰され、本願商標を使用してきた事実等があるとしても、本願の指定商品を取り扱う業界の実情及び需要者の認識などを勘案すると、本願商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、商品の宣伝広告を表示したものと認識するにとどまるものであるから、本願商標を付した商品が、出願人の取扱いに係る商品であると認識されるところとなってきているとの出願人の主張は、これを採用することができない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、前記1のとおり、「忖度」の文字を縦書きしてなるところ、該文字は、「他人の心中をおしはかること。」(「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店))の意味を有する語である。
 そして、当審において職権をもって調査したところ、「忖度」の文字は、2017年に「ユーキャン新語・流行語大賞」において『年間大賞』を受賞したことから、流行語として広く一般に認識されている語であるとはいえるものの、該文字が自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないといえるほどに、不特定多数の者によって商品等の販売、広告等に使用されているとの事実を発見することはできなかった。
 そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用する場合には、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとみるのが相当であるから、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '20/07/15