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A. 本願商標「0120−160−901\イツモキレイ」は、商標法第3条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2019-8275、令和2年3月3日審決、審決公報第244号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「0120−160−901」及び「イツモキレイ」の文字を上下2段に横書きしてなり、第35類「化粧品及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤・医療補助品の小売・卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第44類「医療情報の提供,薬剤情報の提供,美容に関する情報の提供,栄養の指導」を指定役務として、平成30年6月5日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要旨

 原査定は、「本願商標は、『0120−160−901』及び『イツモキレイ』の文字を上下2段に横書きしてなるところ、上段の『0120−160−901』の数字及び記号は電話番号を表したものと認識され、また、下段の『イツモキレイ』の文字は、本願に係る指定役務を取り扱う業界との関係において、いつも綺麗でいるための商品やその方法を表す語である『いつも綺麗』や『いつもキレイ』の文字を片仮名で表記したものと容易に認識されるものである。そうすると、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する需要者は、電話番号と役務の特徴や宣伝文句を表したものとして認識するにとどまり、自他役務の識別標識としては認識し得ないものであるから、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標というのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、上記1のとおり、「0120−160−901」の数字とハイフンの組合せと「イツモキレイ」の文字とを上下2段に横書きした構成からなるものである。
 そして、本願商標の構成中、上段の「0120−160−901」の数字とハイフンの組合せからなる部分は、その構成態様から電話番号を表したものと認識されるにとどまるものである。
 また、本願商標の構成中、下段の「イツモキレイ」の文字部分は、当審において職権をもって調査するも、本願の指定役務の分野において、役務の特徴や宣伝広告等を表示するものとして一般に使用されている事実を発見できず、また、本願の指定役務の取引者、需要者が、当該文字を自他役務の識別標識とは認識しないというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、その構成中「0120−160−901」の部分は、電話番号を表したものと認識されるにとどまり、自他役務の識別標識としての機能を果たし得る部分とはいえないものの、「イツモキレイ」の文字部分は、本願の指定役務との関係において、自他役務の識別標識としての機能を十分に果たし得るといえるものであるから、構成全体として需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標とはいえないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標(別掲)は、商標法第4条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2019-6052、令和2年3月10日審決、審決公報第243号)

本願商標(別掲1)

 
1 本願商標

 本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第43類「一時宿泊施設の提供,宿泊施設の予約の代理・媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,うどん又はそばの提供,レストランにおける飲食物の提供,レストランにおける飲食物の提供に関する情報の提供」他を指定役務として、平成28年7月21日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要点

 原査定は、「本願商標は、その構成中に国立大学法人筑波大学の校章として著名な標章と類似する図形を有してなるものである。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

(1)本願商標について
 本願商標は、別掲1のとおり、「日本橋」及び「天丼」の文字を2段に横書きし、その横に「五三の桐」の家紋状の図形(以下「桐図形」という。)を配し、さらに横に筆文字風の書体で「金子屋」の文字を横書きした構成からなるところ、その構成中の桐図形は、家紋の1つである「五三の桐」の紋所として看取し得るものであり、請求人の提出した、令和元年6月18日付け手続補足書の甲第5号証ないし甲第7号証及び当審における職権調査によれば、「五三の桐」の家紋は、多少のデザインの差異があるものの、企業や組織等において、シンボルマーク等として広く使用されている実情が見受けられる。

(2)原査定において引用する標章について
 原査定において商標法第4条第1項第6号に該当する理由として引用する標章(以下「引用標章」という。」は、別掲2のとおりの構成からなるところ、上記手続補足書の甲第1号証によれば、家紋の1つである「五三の桐」をモチーフとした図形の花の部分のみ「蔭」で表される独特の形状からなるものであり、「筑波大学」のシンボルマーク(校章)として使用されていることが認められる。
 そして、当審における職権調査によれば、引用標章は、筑波大学の関係者には「筑波大学」を表すシンボルマーク(校章)として認識されているとしても、一般に広く知られているという事情は見いだせなかった。

(3)商標法第4条第1項第6号該当性について
 以上のことからすると、「五三の桐」の家紋は、企業や組織等において、シンボルマーク等として広く使用されているものであって、「五三の桐」の家紋をモチーフとした「筑波大学」のシンボルマーク(校章)である引用標章は、一般に広く知られているという事情は見いだせないものである。
 そうすると、本願商標は、その構成中に、引用標章と類似の「五三の桐」の家紋を看取させる図形を含むとしても、引用標章は、著名であるとはいえないものであるから、本願商標は、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標ということはできないものである。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当しない。

(4)まとめ
 以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当しないものであるから、本願商標が同号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。

引用標章(別掲2)


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '20/12/01