最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標(別掲)は、商標法第3条第1項第5号に該当しない、と判断された事例
(不服2020-3909、令和2年7月7日審決、審決公報第248号)
別掲(本願商標)

 
1 本願商標

 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第30類「コーヒー,コーヒー豆」を指定商品として、平成30年12月27日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由(要点)

 原査定は、「本願商標は、『83』の数字とその下方に『HACHI−SAN』の文字を表してなるところ、その構成中の『83』の数字は、商品の品番、規格、等級等を表示するための記号、符号として類型的に取引上普通に採択使用されているものであって、自他商品の識別標識としての機能を有しないものである。一方、『HACHI−SAN』の文字は、その構成中の『83』の数字から生ずる音と認識される『HACHI』、『SAN』を『ハイフン(−)』で繋いで表してなるものであり、これをもって需要者が自他商品の識別標識として認識するとはいい難いものである。そうすると、本願商標をその指定商品に使用したときは、商品の品番、規格、等級等を表示するための記号、符号の一類型を表示したものとして理解するにとどまり、自他商品の識別標識としては、認識し得ないものといえる。してみれば、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と判断するのが相当であり、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、別掲のとおり、数字「8」及びその右側に数字又は図形(以下「右側部分」という。)を大きく上段に配し、「HACHI−SAN」の欧文字及び記号を下段に書してなるものである。
 そして、上段に数字「8」が、下段に「HACHI−SAN」の欧文字等があることから、上段「8」の右側部分は、数字「3」又はそれをモチーフとした図形であることを想起させるところ、右側部分は、数字「8」の輪郭に沿って、部分的に切り取られたような特徴的な形状をしていることから、これは数字の「3」を表したというよりは、むしろ「3」をモチーフとした図形であることを認識させるとみるのが自然である。そうすると、本願商標の構成中の上段部分は、数字「8」と数字「3」をモチーフとした図形が近接してまとまりよく配置されているものであり、その構成全体をもって、自他商品を識別する機能を果たしないとみるべき事情はない。
 してみれば、本願商標は、上段部分が、自他商品を識別する機能を果たし得るものというべきであるから、下段「HACHI−SAN」について言及するまでもなく、原審説示のように、商品の品番等を表示するための記号、符号の一類型を表示したものとして理解されることはなく、また、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標にもあたらない。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。

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B. 本願商標(別掲)は、商標法第4条第1項第4号に該当しない、と判断された事例
(不服2019-015614、令和2年7月8日審決、審決公報第248号)
別掲 本願商標

(色彩については、原本参照。)
 
1 本願商標

 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第41類及び第42類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成29年11月10日に登録出願され、その後、指定役務については、原審における同30年8月8日及び同31年5月9日受付の手続補正書により、最終的に、第41類「インターネットを利用した技術文書及び仕様書の供覧」及び第42類「ファクトリーオートメーション用機器に的確な動作設定を施すことができるようにするための機器用の電子計算機用プログラムの環境設定に関する情報のインターネットを介した提供,電子計算機用テンプレートに関するコンピュータプログラムの設計・作成に関する情報の提供,電子計算機その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」と補正されたものである。


2 原査定の拒絶の要旨

 原査定は、「本願商標は、その構成中に赤色の十字を顕著に表した図形を含むものであるから、赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律第1条で規定する白地に赤十字の標章と類似のものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第4号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、別掲のとおり、ややデザイン化した「CSP」の欧文字を青色で横書きし、その横に近接して、「+」の図形をやや小さく赤色で表した構成からなるところ、その構成中の「CSP」の欧文字と「+」の図形は、縦線が太く、横線が細く書されており、ともに縦線が右方向に傾斜して表されていることに加え、縦線の末端がやや広がるようにデザイン化されているものであるから、本願商標は、構成全体として統一したデザインでまとまりよく表されているといえるものである。
 そして、そのような本願商標の構成において、「+」の図形部分が「CSP」の欧文字部分に比して、小さく付加的に配されていることからすれば、当該図形部分は「+(プラス)」の記号をデザイン化したものと容易に認識されるというべきである。
 そうすると、「CSP」の欧文字部分と「+」の図形部分の色彩が異なるとしても、本願商標の構成においては、「+」の図形部分のみが独立して看る者の注意をひくとはいい難い。
 してみれば、本願商標は、その構成中に「赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律第1条の標章」を顕著に有するということはできず、その構成全体として、当該標章と紛らわしいものではないから、当該標章と類似の商標であるということはできない。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第4号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '21/07/15