最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「人生100年時代のベストサポーターになる」は、商標法第4条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2020-7643、令和3年3月1日審決、審決公報第256号)
 
1 本願商標について

 本願商標は、「人生100年時代のベストサポーターになる」の文字を標準文字で表してなり、別掲のとおりの役務を指定役務として、平成30年3月20日に登録出願されたものである。


2 原査定の拒絶の理由(要点)

 原査定は、「本願商標の構成中『人生100年時代』の文字は、内閣府が中心となり推進している政府の重要政策であり、その構想に関しての会議が短期間に複数回開催されていることからすれば、『人生100年時代』の文字は著名であると認められる。また、『人生100年時代』の文字は、この商標登録出願前からその後にも、新聞記事に取り上げられており、このことからも著名であると認められる。そうすると、本願商標中の『人生100年時代』の文字は、看者の注意を惹き易く、これに接する需要者に上記重要政策を表したものと理解させるため、本願商標は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名な『人生100年時代構想』と類似の商標というのが相当である。したがって、商標法第4条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、上記1のとおり、「人生100年時代のベストサポーターになる」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同書、同大、等間隔で、空白を空けることなく、まとまりよく一体的に表されており、かかる構成においては、いずれかの文字部分が独立して、取引者、需要者に対し、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではない。
 また、本願商標の構成全体から生じる「ジンセイヒャクネンジダイノベストサポーターニナル」の称呼も、やや冗長ながらも、無理なく一連に称呼し得るものであるから、本願商標は、一連の称呼のみが生じるものというのが相当である。
 してみれば、本願商標は、原審が公益に関する事業であると説示する「人生100年時代構想」の文字とは、「人生100年時代」の文字を共通にするものの、それぞれ「のベストサポーターになる」の文字又は「構想」の文字という著しく異なる文字及び文字数を有してなるものであるから、両者は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第6号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、政令の定める期間内に、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「アロエの力」は、商標法第3条第1項第3号に該当しない、と判断された事例
(不服2020-7973、令和3年3月4日審決、審決公報第256号)
 
1 本願商標について

 本願商標は、「アロエの力」の文字を標準文字で表してなり、第29類「アロエを使用した食用油脂,アロエを使用した乳製品,加工済み食用アロエ,アロエ入り納豆,アロエを使用したカレー・シチュー又はスープのもと,アロエ風味の食用たんぱく」を指定商品として、平成30年11月16日に登録出願されたものである。


2 原査定における拒絶の理由(要旨)

 原査定は、「本願商標は、『アロエの力』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の『アロエ』の文字は、『ユリ科の多肉の常緑多年草。』の意味を、『の』の文字は、格助詞の意味を、『力』の文字は、『しるし。ききめ。おかげ。効能。』の意味をそれぞれ有する語であることから、本願商標は、全体として、『アロエの効能』ほどの意味合いを生ずるものである。また、食品を取り扱う業界において、アロエの効能を生かした商品が多数流通している実情が認められ、さらに、原材料の効能を強調した商品が、『〇〇の力』(〇〇には原材料名)と称して多数流通されている実情が認められる。そうすると、本願商標を、その指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、『アロエの効能を有してなる商品』であること、すなわち、商品の品質を表示したものとして認識するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとみるのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、「アロエの力」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「アロエ」の文字は「ワスレグサ科(旧ユリ科)の多肉の常緑多年草。」の意味を、「力」の文字は「しるし。ききめ。おかげ。効能。」の意味を(いずれも株式会社岩波書店 広辞苑第七版)それぞれ有する語である。
 そして、「アロエ」及び「力」の文字を格助詞「の」により結合した「アロエの力」の文字は、その指定商品との関係において、原審説示の意味合いを暗示させる場合があるとしても、これが本願指定商品の品質等を直接的に表示するものと直ちに理解されるとはいえず、むしろ、特定の意味合いを認識させることのない、一種の造語として認識し、把握されるというべきである。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「アロエの力」の文字が、商品の品質等を直接的に表示するものとして一般に使用されている事実は発見できず、さらに、本願商標に接する取引者、需要者が、当該文字を商品の品質等を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、自他商品を識別する機能を果たし得るものと判断するのが相当である。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '21/12/10