最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標(別掲1)は、商標法第4条第1項第7号に該当しない、と判断された事例
(不服2020-15191、令和3年8月18日審決、審決公報第262号)
別掲1(本願商標)
別掲2(引用図記号)

※色彩については原本参照
 
1 本願商標

 本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第16類「文房具類,ステッカー,印刷物」を指定商品として、令和元年5月14日に登録出願されたものである。
 本願は、令和2年2月7日付けで拒絶理由の通知がされ、同年3月30日に意見書が提出されたが、同年7月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年11月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要旨

 原査定は、「本願商標は、日本産業規格の案内用図記号(JIS Z8210)で制定されたAED(自動体外式除細動器)を表示する図記号(以下『引用図記号』という。)とその構成の軌を一にするものと認められるところ、この日本産業規格による図記号は広く一般に使用され、極めて公共性の高いものであるから、これを一私人である出願人が商標として採択することは穏当ではない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

(1)本願商標について
 本願商標は、別掲1のとおり、黒色の四角形内に、いずれも白抜きで、上段には「AED」の欧文字を、下段にはハート状の図形と右に向けて幅が広がるジグザク状の図形とを重ねてなる図形を配し、略四角形の輪郭線で囲んだ構成からなるものである。そして、構成中の「AED」の文字は、「自動体外式除細動器。」を意味する語(「広辞苑第七版」株式会社岩波書店発行)である。

(2)引用図記号について
 引用図記号は、「AED(自動体外式除細動器)」を表す案内用図記号(JIS Z8210)の一つであり、別掲2のとおり、オレンジ色の略四角形内に、いずれも白抜きで、上段には「AED」の欧文字を、下段にハート状の図形を配し、その図形内にオレンジ色の稲妻状の図形を配した構成よりなるものである。

(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
 本願商標と引用図記号とを比較すると、両者は、いずれも四角形内にハート状の図形及び「AED」の欧文字を有する点において共通するものの、本願商標は、輪郭線及びハート状の図形に重ねて右に向けて幅が広がる特徴的なジグザク状の図形を有するのに対し、引用図記号は、輪郭線がなく、ハート状の図形内に収まるように稲妻状の図形が表されてなるから、看者に与える印象が大きく異なるものである。
 したがって、本願商標は、引用図記号とは明らかに異なるものというのが相当であるから、これを登録することが、社会公共の利益に反するものとはいえない。
 また、当審による職権調査によっても、本願商標について、その構成自体が非道徳的であったり、その指定商品に使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものであることを示す事実は見出せない。

(4)まとめ
 以上のとおり、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ではないから、商標法第4条第1項第7号に該当するものではなく、同項同号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「RC100」は、商標法第3条第1項第5号に該当しない、と判断された事例
(不服2021-2819、令和3年8月r日審決、審決公報第262号)
 
1 本願商標

 本願商標は、「RC100」の文字を標準文字で表してなり、第1類及び第5類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成31年3月18日に登録出願されたものである。
 原審では、令和2年3月18日付けで拒絶理由の通知、同年7月2日付けで意見書及び手続補正書の提出、同年11月24日付けで拒絶査定されたもので、これに対して同3年3月3日付けで本件拒絶査定不服審判が請求されている。
 本願商標の指定商品は、原審における上記の手続補正書により、第1類「堆肥」と補正された。


2 原査定の拒絶の理由(要旨)

 本願商標は、「RC100」の文字を標準文字で書してなるところ、これは欧文字2字と数字とを組み合わせて一般的に用いられる書体で書してなり、特段、特徴を有するものでもない。
 そのため、本願商標は、その指定商品に使用した場合、これに接する需要者は、商品の型式及び規格などを表示するための記号・符号の一類型として認識、把握するにとどまるから、自他商品の識別標識としての機能を有しない。
 したがって、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であり、商標法第3条第1項第5号に該当する。


3 当審の判断

 本願商標は、「RC100」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ大きさ及び書体で、間隔なく、横一列にまとまりよく表してなるものである。
 そして、当審において職権をもって調査するも、本願商標の指定商品(堆肥)を取り扱う業界において、「RC100」又はそれに類する文字が、商品の品番や型番、等級等を表示する記号、符号として取引上一般的に使用されている事実は発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、その指定商品と関連して、原審認定のような商品の品番や型番、等級等の表示であると認識される可能性が高いとはいえず、その構成態様や取引の実情を考慮すれば、むしろ、まとまりよく表された一連一体の造語として看取、理解されるものというのが相当である。
 したがって、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であるとはいい難く、商標法第3条第1項第5号に該当しないから、同項同号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '22/8/25