最近の注目審決・判決を紹介します。
|
1 本願商標及び手続の経緯 |
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第18類「かばん類,・・・、等」、第25類「ワイシャツ類,・・・、等」及び第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,・・・」(指定商品・役務の詳細は省略)を指定商品及び指定役務として、令和元年5月16日に登録出願されたものである。
|
2 原査定の拒絶の理由(要旨) |
原査定は、「本願商標は、『Kamakura』の文字と『ShirtS』の文字を上下2段に横書きしてなるところ、その構成中『Kamakura』の文字は、神奈川県の市である『鎌倉』を、『ShirtS』の文字は、『シャツ』を直ちに理解させるから、本願商標は、全体として『鎌倉市のシャツ』といった意味合いを理解させるものである。そうすると、本願商標を、指定商品中、第25類『ワイシャツ類,被服』に使用しても、これに接する需要者は、鎌倉市で製造又は販売されるシャツであること、すなわち、商品の品質(産地、販売地)を認識するにとどまるといえるから、本願商標は、商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、鎌倉市で製造又は販売されるシャツ以外の商品に使用するときは、鎌倉市で製造又は販売されるシャツであるかのように、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。また、・・・、本願商標を、この商標登録出願に係る指定役務中、『被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』に使用しても、これに接する需要者は、取扱商品が、鎌倉市で製造又は販売されるシャツであること、すなわち、取扱商品の品質(産地、販売地)を認識するにとどまり、何人かの業務に係る役務であることを認識することができないといえる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、本願商標を、鎌倉市で製造又は販売されるシャツ以外の商品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供に使用するときは、鎌倉市で製造又は販売されるシャツの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供であるかのように、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。さらに、本願商標は、これを出願人がその指定商品及び指定役務に使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品及び役務であることを認識することができるものとは認められないから、商標法第3条第2項の要件を満たさない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 |
3 当審の判断 |
本願商標は、別掲のとおり、「Kamakura」の欧文字と「ShirtS」の欧文字を二段に、やや左右にずらして表してなるところ、本願商標の構成中の「Kamakura」の文字は、「神奈川県南東部、相模湾に臨む市」(出典:広辞苑第七版)である「鎌倉」を、「ShirtS」の文字は、本願指定商品に含まれる「シャツ」を理解させるものである。
|
B. 本願商標「B−DASH」は、商標法第4条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2021-4266、令和3年11月8日審決、審決公報第264号)
|
1 本願商標及び手続の経緯 |
本願商標は、「B−DASH」の文字を横書きしてなり、第25類「運動用特殊靴,履物」を指定商品として、令和2年4月24日に登録出願されたものである。
|
2 原査定の拒絶の理由(要旨) |
本願商標は、「B−DASH」の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ、これは、国土交通省が新技術の研究開発及び実用化を加速することにより、下水道事業における低炭素・循環型社会の構築やライフサイクルコスト縮減、浸水対策、老朽化対策等を実現し、併せて、本邦企業による水ビジネスの海外展開を支援するために行っている「下水道革新的技術実証事業」の著名な略称である「B−DASHプロジェクト」(以下「引用標章」という。)と同一又は類似する。
|
3 当審の判断 |
本願商標は、「B−DASH」の文字を横書きしてなるところ、その構成文字は「B」の欧文字と、「突進する。勢いよく走る。」の意味を有する「DASH」の欧文字(「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)を、ハイフンを介して横一列に結合してなるもので、構成文字全体でまとまりよく一連一体の造語を表してなると認識、理解できる。
|