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A. 本願商標(別掲)は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条1項第16号に該当しない、と判断された事例
(不服2021-1413、令和4年2月22日審決)

別掲 本願商標
 
1 手続の経緯

 本願は、令和元年7月11日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
 令和2年 3月 6日付け:拒絶理由通知書
 令和2年 9月28日  :意見書の提出
 令和2年10月29日付け:拒絶査定
 令和3年 2月 1日  :審判請求書の提出


2 本願商標

 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第30類「弁当,パン,調味料,香辛料,カレー粉」を指定商品として登録出願されたものである。


3 原査定の拒絶の理由(要旨)

 本願商標は、「ガンジス」の文字及び「ganges」(「a」の文字の上部にはアクセント記号が付されている。)を上下2段に横書きしてなるものであるところ、「ganges」の文字は「インドの大河。西部ヒマラヤ山脈に発源、諸支流を合わせて南東に流れ、ベンガル湾に注ぐ。」を表す語であり、上段の「ガンジス」の文字は、下段の「ganges」の文字の読みを表記したものと認識される。そうすると、本願商標をその指定商品に使用した場合、取引者及び需要者は、「ガンジス川周辺で生産される商品」であることを理解するにとどまるというのが相当であり、本願商標は単に商品の品質、産地を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記商品以外の商品に使用した場合、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるため、同法第4条第1項第16号に該当する。


4 当審の判断

 本願商標は、別掲のとおりの構成からなるところ、上段の「ガンジス」の片仮名が、「インドの大河。西部ヒマラヤ山脈に発源、諸支流を合わせて南東に流れ、ベンガル湾に注ぐ。」(広辞苑第6版)である「ガンジス川」を想起させるとしても、本願の指定商品との関係においては、商品の産地及び販売地を表示したものとして直ちに理解されるとはいい難い。
 そして、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「ガンジス」の文字が、商品の産地、販売地又は品質を直接的に表示するものとして一般に使用されている事実は発見できず、さらに、本願商標に接する取引者、需要者が、当該文字を商品の産地、販売地又は品質等を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標の下段の「ganges」(「a」の文字の上部にはアクセント記号が付されている。)の欧文字が上段の片仮名の外国語表記であるとしても、本願商標は、その構成全体において商品の産地、販売地又は品質を表したものとはいえず、自他商品を識別する機能を果たし得るものというべきである。
 また、本願商標が商品の産地、販売地又は品質等を表示するものでない以上、本願商標は、商品の品質の誤認を生ずるおそれもないものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「Be19」は、商標法第3条第1項第5号に該当しない、と判断された事例
(不服2021-7432、令和4年2月18日審決)
 
1 手続の経緯

 本願は、令和2年11月30日の出願であって、同3年2月1日付けの拒絶理由の通知に対し、同月5日受付の意見書が提出されたが、同年3月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2 本願商標

 本願商標は、「Be19」の文字と数字を標準文字で表してなり、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。),殺菌剤(農薬に当たるものを除く。),殺虫剤(農薬に当たるものを除く。),空気浄化剤,医療用せっけん,消毒用せっけん,医療用洗浄剤,ワクチン類,生物学的製剤,食餌療法用食品,食餌療法用飲料,乳幼児用食品,乳幼児用飲料,栄養補助食品,栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。),衛生マスク」を指定商品として登録出願されたものである。


3 原査定の拒絶の理由の要旨

 本願商標は、「Be」の欧文字2字と「19」の数字2字とを結合した「Be19」の文字を標準文字で表してなるところ、欧文字2字と数字2字との組合せからなる標章は、商品の種類、規格等を表すための記号、符号として、取引上、一般に使用されているものである。
 そうすると、本願商標は、商品の型番等を表示するための記号、符号の一類型を表したものとみるべきであって、これに接する取引者、需要者をして、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と認識されるにとどまり、自他商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないものであると判断するのが相当である。
 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。


4 当審の判断

 本願商標は、「Be19」の文字と数字を標準文字で表してなるものである。
 そして、英語の文章表記においては語頭を大文字とし、続く文字を小文字で表すことが通例であることが広く知られていることに加え、「B(b)e」が親しまれた英単語(・・・である、を意味する英語の連結動詞の一つ。いわゆるbe動詞。)であることをも踏まえると、本願商標は、商品の品番、型番、種別、規格等を表すための記号、符号の一類型を表したと直ちに理解されるとはいい難く、その構成文字全体をして「Be」の文字(いわゆるbe動詞)と「19」の数字を組み合わせた一種の造語であると認識し理解されるとみるのが相当である。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、ローマ字の大文字「B」と小文字「e」を数字「19」で結合した「Be19」やローマ字の大文字と小文字を数字で結合した標章が、商品の品番又は型番等を表した記号又は符号として一般的に使用されている事実や、本願商標に接する需要者、取引者が、「Be」の文字(いわゆるbe動詞)と数字を商品の品番又は型番等を表したものと認識するというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、極めて簡単な標章とい得るものの、ローマ字の大文字と小文字を数字で結合した標章が一般的に使用されていると認められないことから、ありふれた標章ということはできない。
 以上から、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標にとどまるものとはいえず、また、その指定商品との関係において、自他商品を識別する標識としての機能を果たし得るものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '23/03/02