最近の注目審決・判決を紹介します。

A. 本願商標「ISOPURE」は、商標法第4条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2021-9479、令和4年5月9日審決)
 
1 手続の経緯

 本願は、令和元年8月23日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
 令和2年9月25日付け:拒絶理由通知書
 令和3年1月4日   :意見書、手続補正書の提出
 令和3年4月8日付け :拒絶査定
 令和3年7月16日  :審判請求書の提出


2 本願商標

 本願商標は、「ISOPURE」の文字を標準文字で表してなり、第5類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、登録出願されたものであり、その後、指定商品については、上記1の手続補正書により、第5類「食餌療法用飲料,栄養補助用サプリメント,食餌療法用食品,サプリメント,ビタミン及びミネラルを主原料とする栄養補助サプリメント,サプリメント飲料の素,包装済の食品サプリメント,エネルギー強化用の栄養補助サプリメント,乳清及び植物たんぱく質を含有した粉状の食餌療法用食品,乳清及び植物たんぱく質を含有した粉状の栄養補助用サプリメント飲料の素」に補正されたものである。


3 原査定の拒絶の理由の要点

 原査定は、「本願商標は、「ISOPURE」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中に工業製品・部品・使用技術の規格統一を推進するための国際機関である「国際標準化機構」(International Organization for Standardization)の著名な略称である「ISO」の文字を含んでなるものであるから、前記団体を表示する著名な標章と類似する商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


4 当審の判断

 本願商標は、「ISOPURE」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、すべて同じ書体、同じ大きさで、等間隔をもって表されてなるものであるから、視覚上、まとまりよく、全体として一体的に看取されるものである。
 また、本願商標の構成全体から生じる「イソピュア」の称呼も、4音と短く、よどみなく一連に称呼し得るものである。
 そして観念上も、本願商標を殊更「ISO」と「PURE」とに分断して観察しなければならないとする特段の理由を見いだすことはできない。
 そうすると、本願商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「ISO」の文字部分のみに着目し、これを独立した識別標識として認識するとはいえず、むしろ、本願商標の構成文字全体をもって、特定の意味を有しない一体的な造語を表したものとして認識し、把握するというべきである。
 してみれば、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、「国際標準化機構(International Organization for Standardization)」の略称である「ISO」を連想、想起するということはできないから、本願商標は、上記国際機関を表示する著名な標章とは類似しないものである。
 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「GRI」は、商標法第4条第1項第6号及び同項第8号に該当しない、と判断された事例
(不服2021-12123、令和4年5月24日審決)
 
1 手続の経緯

 本願は、令和2年2月21日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
 令和3年1月27日付け:拒絶理由通知書
 令和3年2月19日  :意見書、手続補正書の提出
 令和3年6月23日付け:拒絶査定
 令和3年9月10日  :審判請求書の提出


2 本願商標

 本願商標は、「GRI」の文字を標準文字で表してなり、第35類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、登録出願されたものであり、その後、指定役務については、上記1の手続補正書により、別掲(※記載省略)のとおりの役務に補正されたものである。


3 原査定の拒絶の理由の要点

 原査定は、以下のとおり、認定、判断し、本願を拒絶したものである。
(1)本願商標は、「GRI」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、オランダに本部を置く国際NGO「Global Reporting Initiative(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)」の著名な略称として使用されている実情がある。
 そうすると、本願商標は、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する著名な標章と同一又は類似するものである。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当する。
(2)本願商標は、「GRI」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、オランダに本部を置く国際NGO「Global Reporting Initiative(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)」の著名な略称を示すものであり、かつ、その者の承諾を得ているものとは認められない。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。


4 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第6号該当性について
 本願商標は、「GRI」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、原審説示のように、オランダに本部を置く国際NGO「Global Reporting Initiative(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)」の略称として使用されることがある「GRI」の文字と同一の文字である。
 しかしながら、原審で示した使用例においては、「GRI」の文字の近傍に、上記NGOの正式名称である「Global Reporting Initiative」又は「グローバル・レポーティング・イニシアティブ」の文字の記載があることからすると、これらの事実をもって、「GRI」の文字が、単独で、上記NGOの略称として、広く認識されているとはいい難い。また、当審において、職権で調査しても、「GRI」の文字が、単独で、上記NGOを表示するもの、あるいは上記NGOの略称として、我が国において著名なものとなっているものと認められる事実を見いだすことはできなかった。
 そうすると、本願商標は、商標法第4条第1項第6号にいう「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」に該当するものとはいえない。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当しない。

(2)商標法第4条第1項第8号該当性について
 「GRI」の文字は、上記(1)のとおり、上記NGOの名称の略称として著名となっていたと認めることはできず、本願商標の登録出願の時においても同様である。
 そうすると、本願商標は、上記NGOの略称として使用されることのある「GRI」の文字と同一の文字からなるものであるとしても、他人の著名な略称を含む商標であるとは認められない。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。

(3)まとめ
 以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第6号及び同項第8号のいずれにも該当しないものであるから、これらを理由として本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '23/03/30