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A. 本願商標(別掲)は、商標法第4条第1項第8号に該当しない、と判断された事例
(不服2021-003661、令和4年5月10日審決)

別掲(本願商標)
 
1 本願商標及び手続の経緯

 本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第14類「宝飾品,貴金属,キーホルダー,身飾品,宝玉及びその模造品,貴金属製靴飾り,時計」を指定商品として、令和2年4月17日に登録出願されたものである。
 本願は、令和2年9月3日付けで拒絶理由の通知がされ、同月28日に意見書が提出されたが、同年12月17日付けで拒絶査定がされ、これに対して同3年3月22日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


2 原査定の拒絶の理由の要旨

 原査定は、「本願商標は、「yoHjiyAMAMoto」の文字を含んでなるところ、当該文字は、氏名の一つを欧文字で表したものであり、これに照応する氏名の者が存在するから、本願商標は、他人の氏名を含むものであり、かつ、出願人は、本願商標を登録することについて、当該他人から承諾を得ていない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。


3 当審の判断

 本願商標は、別掲のとおり、セリフ体風に書された「Ground」の欧文字とその右横にサンセリフ体風に書された「Y」の欧文字を「Ground」の文字より大きく書し、その下に図案化が施された「yoHjiyAMAMoto」の欧文字(以下「yoHjiyAMAMoto」と表示する。)を横書きにしてなるところ、その構成中の「yoHjiyAMAMoto」は、当該文字に相応して「ヨウジヤマモト」と称呼され、「ヨウジヤマモト」と称する他人が、請求人(出願人)(以下「請求人」という。)以外に存在することも認められるものである。
 しかしながら、「yoHjiyAMAMoto」は、全てが子音、母音の順に配置されているとはいえないものであり、また、当該文字の構成中の「j」の欧文字と認識し得る文字は、欧文字「i」とその下に片仮名「ノ」を、欧文字「H」の下部にかけて追記しているような態様となっているため、欧文字「j」を普通に表記しているとは認められないことから、氏名を普通に用いられる方法で表したとは認められないものである。
 また、氏名を欧文字で表記する場合、(1)「名」及び「氏」の頭文字のみを大文字で表記し、その他を小文字で表記する、(2)「名」及び「氏」の全てを大文字のみ又は小文字のみで表記する、(3)「名」の頭文字のみを大文字で、その他を小文字で表記し、「氏」の全てを大文字で表記するといった表記方法が一般的であるところ、「yoHjiyAMAMoto」は、各文字間にスペースがなく、かつ、大文字と小文字とを不規則に混在させて構成されていることからすると、「yoHjiyAMAMoto」は、「名」に該当する部分と「氏」に該当する部分とに区別し得ない態様であるといえる。
 そして、当審において職権で調査するも、氏名を欧文字で表記する場合、大文字と小文字とを不規則に混在させて表記している例は見当たらず、また、「ヨウジヤマモト」と称する者が、自らの名称(氏名)を「yoHjiyAMAMoto」と表記している例は発見できなかった。
 そうすると、本願商標の構成中の「yoHjiyAMAMoto」が、「ヨウジヤマモト」と称呼され、かつ、「ヨウジヤマモト」と称する請求人以外の他人が存在するとしても、当該文字に接する取引者、需要者が、これを「ヨウジヤマモト」と称する他人の名称(氏名)を欧文字で表示したものと認識するとはいえないと判断するのが相当である。
 したがって、本願商標が、他人の名称(氏名)を含み、かつ、請求人が、その他人の承諾を受けていないとして、商標法第4条第1項第8号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標「ボウジャガ」は、商標法第3条第1項第3号に該当しない、と判断された事例
(不服2021-013387、令和4年5月23日審決)
 
1 手続の経緯

 本願は、令和元年12月17日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
 令和 2年11月 6日付け:拒絶理由通知書
 令和 2年11月24日  :意見書、手続補正書の提出
 令和 3年 6月24日付け:拒絶査定
 令和 3年10月 4日  :審判請求書の提出


2 本願商標

 本願商標は、「ボウジャガ」の文字を標準文字で表してなり、第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、登録出願されたものであり、その後、指定商品については、上記1の手続補正書により、第30類「じゃがいもを使用してなる菓子,じゃがいもを使用してなるサンドイッチ,じゃがいもを使用してなるピザ,じゃがいもを使用してなる弁当」と補正されたものである。


3 原査定の拒絶の理由の要旨

 本願商標は、「ボウジャガ」の文字を標準文字で表してなるところ、これは「棒ジャガ」に容易に通じるものといえる。
 そして、「ボウ(棒)」とは「手に持てるほどの細長い木・竹・金属などの称」を意味する語であり、「ジャガ」とは、「ジャガいもの略」を意味する語である。
 ところで、食品に係る業界においては、形を棒状に加工した商品について「棒チョコ」や「棒餅」というように、「棒○○」(○○には食品名が入る)の語が使用されている事実がある。
 そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、「棒状のジャガいも」であることを認識するにとどまることから、本願商標は、単に商品の品質、形状、原材料を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものというのが相当である。
 したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。


4 当審の判断

 本願商標は、「ボウジャガ」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔をもって、外観上まとまりよく一体的に表してなるものである。
 そして、本願商標構成中の「ジャガ」の文字部分が「ジャガいもの略」を意味する語(広辞苑第7版 岩波書店)であるとしても、「ボウ」の文字部分は、「暴」、「望」、「帽」等の様々な漢字や英単語「bow(弓。蝶結び。)」の読みに通じる文字であり、その意味合いが特定できないことから、これらの文字を結合してなる「ボウジャガ」の文字全体からも、原審説示の「棒状のジャガいも」というような意味合いを直ちに理解させるものとはいい難いものであり、特定の意味合いを認識させることのない、一種の造語として看取されるものとみるのが相当である。
 また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「ボウジャガ」の文字が、商品の品質を直接的かつ具体的に表示するものとして一般に使用されている事実は発見できず、さらに、本願商標に接する取引者、需要者が、当該文字を商品の品質を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。
 そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、商品の品質を表示するものとはいえず、自他商品を識別する機能を果たし得るものである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '23/03/30