(1)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本願商標について
(ア)本願商標は、別掲1のとおり、上段に「ストーンオーシャン」の片仮名を、中段に「STONE」の欧文字、蝶を模した図形及び「OCEAN」の欧文字を、それらを斜めに横切るような曲線の間に、横一列に配置し、下段に「ジョジョの奇妙な冒険」の文字を表してなるところ、上中下の各段は、書体や文字の大きさを異にするものの、間を空けずに曲線を介して近接して配置されているから、構成全体として視覚上まとまりのよい不可分一体の構成からなるものである。
(イ)そして、本願商標の上段及び中段の文字部分(ストーンオーシャン、STONE OCEAN)の構成中、「STONE」(ストーン)の文字は「石」の意味を、「OCEAN」(オーシャン)の文字は「海」の意味を有する英語(外来語)である(参照:「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店、「広辞苑 第7版」岩波書店)が、両語を結合して成語となるものではなく、それぞれの語義を結合した意味合いも漠然としている。
(ウ)また、本願商標の構成中、「ジョジョの奇妙な冒険」の文字は、「荒木飛呂彦」著の漫画作品のタイトルに相当し、同作品は1987年に連載開始、同シリーズのコミックスの累計発行部数は1億部を突破、アニメ化や映画化、関連グッズ(アクセサリー等を含む。)の販売もされている(甲6、甲8〜甲14)。
なお、同作品の第6部(ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン)のコミックスは、1巻(2000年発売)から17巻(2003年発売)が刊行され、そのアニメ作品のタイトルとして、本願商標と構成を共通にする標章が表示されている(甲3、甲12)。
(エ)以上を踏まえると、本願商標は、まとまりのよい不可分一体の構成や、構成全体としては漫画作品のタイトルに通じることを踏まえると、それぞれの構成部分(段)を分離して観察することは取引上不自然である。
そして、本願商標の構成においては、「ストーンオーシャン」の片仮名が最も大きく書されているものの、需要者に対して強く印象及び記憶に残るのは、我が国で広く知られている漫画作品のタイトルである「ジョジョの奇妙な冒険」の文字部分というべきで、当該文字部分が、本願商標の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部であると認められる。
(オ)そうすると、本願商標は、その構成文字(要部を含む。)に相応して、「ジョジョノキミョウナボウケン」、「ストーンオーシャン」及び「ストーンオーシャンジョジョノキミョウナボウケン」の称呼が生じ、「荒木飛呂彦著の漫画作品」を想起させる。
イ 引用商標について
引用商標は、別掲2のとおり、「STONEOCEAN」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成中「STONE」の文字は「石」の意味を、「OCEAN」の文字は「海」の意味を有する英語である(参照:「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)ものの、両語を結合して成語となるものではなく、それぞれの語義を結合した意味合いも漠然としている。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「ストーンオーシャン」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
ウ 本願商標と引用商標の比較
本願商標の要部(ジョジョの奇妙な冒険)と引用商標(STONEOCEAN)を比較すると、その構成文字(及びそれより生じる称呼及び観念)の明らかな差異により、外観、称呼及び観念のいずれも著しく相違する。
また、本願商標の構成全体と引用商標を比較しても、外観においては、その欧文字部分(「STONE」、「OCEAN」)の構成文字を共通にするが、その他の文字部分及び図形部分の有無の差異により、判別は可能である。また、称呼においては、複数生じる称呼のうち、共通する称呼(ストーンオーシャン)を含むものの、その他の称呼の有無に明らかな差異があるから、相紛れるおそれはない。さらに、観念においては、引用商標からは特定の観念は生じないものの、本願商標の要部は「荒木飛呂彦著の漫画作品」を想起させるから、それぞれの印象において相違する。
そうすると、本願商標と引用商標とは、要部の比較において著しく相違するもので、構成全体としても、外観及び称呼において相紛れるおそれはなく、観念における印象も相違するから、それらを総合して考察すれば、同一又は類似の商品について使用されるときであっても、その出所について相紛れるおそれはないから、類似の商標とは認められない。
エ 小括
したがって、本願商標は、引用商標とは、類似する商標ではないから、その指定商品について比較するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないから、同項同号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。