最近の注目審決・判決を紹介します。
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1 本願商標及び手続の経緯 |
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第5類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、令和3年1月8日に登録出願されたものである。
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2 原査定の拒絶の理由(要旨) |
本願商標は、「広範囲のウイルス細菌に効く」の文字を、しずく型の図形内に3段書きで表してなるところ、このような構成は、普通に用いられる方法の域を脱しない方法で表示するものである。
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3 当審においてした証拠調べ通知 |
当審において、本願商標が、その指定商品との関係において、商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲2及び3(※記載省略)に掲げる事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条の規定に基づき通知し、請求人の意見を求めた。 |
4 通知に対する請求人の意見 |
別掲の事例のうち、文字のみからなる事例は、雫状枠内の図形部分と文字部分を組み合わせた事例ではなく、また、図形部分と文字部分とを組み合わせた事例も、図形部分は本願商標とは異なる図形である。本願商標の図形部分は特殊な態様をなしており、極めて簡単な図形でもなく、日常生活においてありふれて使用されているものではない。 したがって、本願商標は、特殊な態様の図形を含むから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得る。 |
5 当審の判断 |
(1)商標法第3条第1項第3号該当性
(2)請求人の主張
(3)まとめ
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B. 本願商標「海老のちから」は、商標法第3条第1項第3号に該当しない、と判断された事例
(不服2022-4798、令和4年10月20日審決)
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1 手続の経緯 |
本願は、令和2年12月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
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2 本願商標 |
本願商標は、「海老のちから」の文字を標準文字で表してなり、第29類「えび(生きているものを除く。)」を指定商品として登録出願されたものである。 |
3 原査定の拒絶の理由の要旨 |
原査定は、「本願商標は、「海老のちから」の文字を普通に用いられる方法(標準文字)で表示してなるものである。そして、その構成中の「ちから」の文字は「効能」の意味を有する語であり、「海老」の文字は、本願の指定商品を表す語であるから、本願商標は、全体として「海老の効能」ほどの意味合いを生ずるものである。そして、飲食料品の分野においては、商品や原材料の効能を誇称するに際し「○○の力(○○には商品や原材料名が入る。)」の文字が使用されている実情がある。そうすると、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、当該商品の効能を誇称して表示したもの(品質)として認識するものとみるのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 |
4 当審の判断 |
本願商標は、「海老のちから」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「海老」の文字が「十脚目長尾亜目の甲殻類の総称。」を意味する語であり、「ちから」の文字が「人や動物にもともと備わっている、自ら動き、または他の物を動かす働き。体力。ききめ。効果。効力。」等の意味を有する「力」の語(いずれも、「デジタル大辞泉」株式会社小学館)の平仮名表記であって、これらの文字を格助詞の「の」で結合してなる「海老のちから」の文字は、例えば、「海老の体力」、「海老の効果」等、各語の語義を結合した多様な意味合いを連想、想起させ得るものである。
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