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A. 本願商標(別掲)は、商標法第3条第1項第4号に該当しない、と判断された事例
(不服2023-2036、令和6年2月8日審決)
別掲 本願商標
 
1 手続の経緯

本願は、令和4年4月4日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
 令和4年  6月  3日付け:拒絶理由通知書
 令和4年  8月25日付け:意見書の提出
 令和4年  9月27日付け:拒絶査定  
 令和5年  1月19日付け:審判請求書の提出


2 本願商標

 本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第30類「菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)」を指定商品として登録出願されたものである。


3 原査定の拒絶の理由の要点

 原審において、「本願商標は、「高林堂」の文字を毛筆風の書体により縦書きで表してなるものであるが、毛筆風の書体により縦書きで書する手法は、商品の宣伝広告のために文字を強調させる手法として一般的に行われており、格別に特殊な態様とまではいえず、商品の取引上、一般に用いられる範囲にとどまるものというのが相当である。そして、その構成中の「高林」の文字は、姓氏の一つであって、我が国においてありふれた氏の一つであり、また、その構成中の「堂」の文字は、商号や屋号に慣用的に付される語であるから、本願商標は、全体として、ありふれた名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえる。また、意見書に添付された証拠によれば、オンラインショップ等において、本願商標に係る指定商品が取引されていたことが伺えるものの、実際に使用している商標の態様、使用数量(生産数、販売数)、使用期間及び使用地域、広告宣伝の方法、期間、地域及び規模等が証明できる資料が見当たらないため、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとして認めることはできない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。」旨認定、判断し、拒絶したものである。


4 当審の判断

 本願商標は、別掲のとおり「高林堂」の文字を毛筆風の書体で縦書きしてなるところ、本願の指定商品である菓子を取り扱う業界では、店の屋号を表す文字に、毛筆風の書体を使用することが一般に行われており、また、本願商標の毛筆風の書体も、例えば、字書(株式会社二玄社「大書源」)には、本願商標と近似した書体が掲載されている。
 これらのことからしても、本願商標は、普通に用いられる方法の域を脱するものとはいえない。
 次に、本願商標の構成中、「高林」の文字は「[こうりん]種子を挿し木で育て、伐期になるまで40〜50年かかる林。」の意味を、「堂」の文字は「商店の屋号又は人の雅号などに添えていう語。」等の意味(いずれも「広辞苑第7版」株式会社岩波書店)を有する語である。
 ところで、当審における職権調査によれば、「高林」を姓氏とする者について、全国件数は2,809件、全国順位は1,176位(「姓名分布&ランキング」のウェブサイト(http://www2.nipponsoft.co.jp/bldoko/index.asp))との記載、また、読みは、「たかばやし」であって、全国順位は1,198位、全国人数はおよそ14,500人(「名字由来net」のウェブサイト(https://myoji-yurai.net/main.htm))との記載が見受けられる。
 そうすると、「高林」の文字が姓氏の一つとして認識される場合があるとしても、当該文字が「[こうりん]種子を挿し木で育て、伐期になるまで40〜50年かかる林。」の意味を有する成語であることに加え、当該文字を姓氏とする者の数が、全国的にみてもその順位や数がさほど多いとはいえないことを踏まえれば、「高林」の文字からは、一義的に「タカバヤシ」と称する「高林」の姓氏を想起するものとはいい難い。
 してみれば、本願商標は、単にありふれた氏と「商店の屋号又は人の雅号などに添えていう語。」である「堂」の文字からなるありふれた名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえないものであって、自他商品の識別標識としての機能を果たすものというのが相当である。
 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当しない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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B. 本願商標(別掲)は、商標法第3条第1項第6号に該当しない、と判断された事例
(不服2023-2300、令和6年2月15日審決)
別掲 本願商標
 
1 手続の経緯

 本願は、令和4年5月12日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
 令和4年 9月 7日付け:拒絶理由通知書
 令和4年10月11日 :意見書の提出
 令和4年11月10日付け:拒絶査定
 令和5年 2月10日 :審判請求書の提出


2 本願商標

 本願商標は、別掲の構成よりなり、第30類「甘酒」を指定商品として登録出願されたものである。


3 原査定の拒絶の理由の要点

 原審において、「本願商標は、「A」及び「Amasake」の欧文字とを二段に書してなるところ、その構成中の「A」の文字は、「英語アルファベットの第1字(母音字)」の意味を有し、商品の品番、等級、品質等を表す記号、符号として用いられているアルファベット文字の一字又は二字の一類型と認められる。また、構成中の「Amasake」の文字は、「白米の固めのかゆに米こうじをまぜ、発酵させて作る甘い飲物。」の意味を有する「甘酒(あまざけ)」と同義の語として使用されている「あまさけ」のローマ字表記を容易に認識させるものであるから、本願商標は全体として「A品番の甘酒」程度の意味が認識される。そして、本願の指定商品の分野において、多数の業者により、「あまさけ」及び「AMASAKE」の文字が、本願の指定商品「甘酒」に使用されている実情がある。そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「A品番の甘酒」ほどの意味合いを表現したものと容易に理解、認識させるものであって、何人かの業務に係る商品であるかを認識することができない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、拒絶したものである。


4 当審の判断

 本願商標は、別掲のとおり、大きく表した欧文字「A」の下段に、当該文字よりもかなり小さくかつ当該文字と両端をそろえた「Amasake」の文字を配したものであり、視覚上、まとまりよく一体的に看取されるものである。
 そして、本願商標の構成中、「Amasake」の文字は「白米の固めのかゆに米こうじをまぜ、発酵させて作る甘い飲物。」を意味する「甘酒(あまざけ)」(「デジタル大辞泉」株式会社小学館)の同義語として使用されている「あまさけ」をローマ字表記したものと容易に認識し得るものであるから、本願の指定商品を表したものと認められる。
 また、一般に欧文字1字若しくは2字が、商品の品番、型式等を表示するための記号、符号等として使用される場合があるとしても、当審における職権調査によれば、本願の指定商品との関係において、商品名よりも相当に大きな文字で表され、当該商品名の上段に配された欧文字1字が、商品の品番等を表示する記号等として一般に使用されているといった取引の事情は見いだせない。
 そうすると、本願商標に接する取引者、需要者は、本願商標を商品の品番等と商品名との組み合わせとして認識するというよりは、むしろ、かかる構成及び取引の実情からその構成全体をもって商品の出所を表示するものとして、認識、把握されるとみるのが自然である。
 さらに、本願商標は、これに接する取引者、需要者が、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないと認識する事情も発見できなかった。
 してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであるから、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえないというべきである。
 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消を免れない。
 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。


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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '25/02/27