H16年改正職務発明の「手続事例集」について(上)


 改正職務発明の「手続事例集」について(上)((下)は次回掲載予定)
 特許法第35条が改正され、新しい職務発明制度が、平成17年4月1日から施行される。この改正法の国会審議の過程で、改正規定についての手続事例集を作成することが特許庁に求められた為、特許庁が「手続事例集」を作成し、公表したので、これを紹介する(改正職務発明の規定は、改正前の事例には遡及して適用されない)。特許庁は、新職務発明制度について、各使用者等と各従業者等が自主的に対価を取り決める場合、具体的な手続きを行う際に生ずる様々な疑問に答えられるよう、広く一般から意見募集を行い、参考となる事例集を作成し、この程、公表した。なお今後も、必要に応じて改訂して行くとしている。この手続事例集(Q&A形式)は、法的拘束カを有しないが、前記改正法の問題の所在を考える場合、参考となると思われるから紹介する。また、その内容量が多いので、2回に分けて、且つ内容を省略した形式で紹介する。従って、詳細については、特許庁のホームページを参照されたい。
 

I.基礎編

第1章   総論
1.新しい職務発明制度の概要について
 問1. 職務発明制度の趣旨は何ですか。
答; 発明を奨励し、且つ発明を行った従業者等と、支援をなした使用者等との間の利益の調整を図るのが制度の趣旨である。
 問2. 新しい職務発明制度の基本的な考え方は何ですか。
答; 対価の決定は、原則として、両当事者問の「自主的な取決め」に委ね、これが不合理と認められる場合には、従来と同様に、一定の要素を考慮して算定される対価を「相当の対価」とする。
 問3. 従来の制度とどのような点が異なりますか。
答; 契約、勤務規則その他の定めで決まる「相当の対価」が不合理と認められない限り、これを認める。これが不合理と認められる場合には、従来と同様に、一定の要素を考慮して算定される対価を「相当の対価」とする。
2.特許法第35条第4項と特許法第35条第5項の関係について説明して下さい。
 問1. 第35条第4項、第5項の関係について
答; 第4項に規定する要件を満たす場合は、第5項は適用されない関係にある。
問2〜問5 第4項、第5項は、具体的に何を意味しているのですか。  
答; 4項の規定は、対価の額の基準を規定する勤務規則等に従った対価の支払いの合理性を判断する基準として、
@その勤務規則等を策定するためになされた使用者等と従業者等との協議の状況、
A策定された勤務規則等の開示の状況、
B対価の額の算定についての従業者等からの意見聴取の状況
を挙げている。
 
第2章  対価を決定するための基準の策定に際して使用者等と
従業者等との間で行われる協議について
1.基準を定める形式について
 問1. 基準は必ず策定しなければなりませんか。
答; 使用者等は対価を決定するための基準を常に策定しなければならないわけではありません。
 問2. 同一の使用者等が複数の基準を策定することはできますか。
答; 基準は一つである必要はありません。管理職と非管理職、研究者とその他の従業者等につき、各別の基準を設けてもよい。
問3〜問6 「対価を決定するための基準」は、「契約、勤務規則その他の定め」には、労働協約、就業規則を含まれますか。
答; 「対価を決定するための基準」は、契約、勤務規則その他の定めとあり、労働協約、就業規則でも良い。
2.使用者等の協議の相手方について
問1〜問2 「協議」は、使用者等と誰(どの従業者等)との間でなすべきでしょうか。
答; 基準の適用を想定している従業者等と協議を行う。
  2−1 集団的に話合いを行う場合
問1〜問5 基準を策定する場合、一人一人と話し合わず、集団的に話し合いを行うことも「協議」に含まれますか。
答; 集団的に話し合いを行うことも協議に該当する。
 2−2 代表者と話合いを行う場合
問1〜問9 . 従業者等が代表者を通じて話し合いを行うことも「協議」に含まれますか。
答; 協議の対象となっている従業者等を正当に代表している場合の話し合いも協議となる。
3.協議の進め方について
問1〜問4 使用者等と従業者等との話し合いで合意に至らなかった基準を従業者等に適用することは、どのように評価されますか。
答; 第4項の「協議」は、策定される基準について合意をすることまで含んではいない。実質的に協議が尽くされたと評価できる場合は、協議の状況としては不合理性を否定する方向に働く。
 
第3章    対価を決定するための基準の内容
1.基準に定める内容について
問1〜問2 「対価を決定するための基準」は、どの程度具体的に定めたものを言いますか。
答; 「対価を決定するための基準」は、具体的にある特定の内容が定められている必要はない。
2.対価の算定方式について
問1〜問4 対価算定の方式として、売上高又は利益といった実績に応じた実績報償を定めないと不合理と評価されますか。
答; 「対価を決定するための基準」の内容がいかなるものであるか、という点は、「その定めたところにより対価を支払うこと」、すなわち対価が決定されて支払われるためでの全過程について不合理と認められるか否かが判断される際に、補完的に考慮される要素となります。
 
第4章    策定された基準の開示について
問1〜問6 「開示」の方法に、制約はありますか。
答; 第4項の「開示」とは、策定された基準を当該基準が適用される各従業者等に対して掲示すること全般を意味するが、その開示方法には特に制約はない。見やすい場所に掲示する方法、書面(会報、社内報)を交付する方法、常時アクセスできるイントラネットにおいて公開する方法、常時、インターネットのホームページにおいて公開する方法などがある。
 
第5章    対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取について
1.意見の聴取の方法について
問1〜問6 「意見の聴取」として、個々の職務発明に係る対価の算定に関して個別の従業者等の意見を実際に聴取しなければならないのでしょうか。
答; 使用者等から当該従業者等に対して意見の聴取を求めたと評価できるような事実があれば、それは「意見の聴取」がなされたと評価される。
2.意見の聴取の進め方について
問1〜問6 意見の聴取は、従業者等から要望があったら必ず行う方が望ましいか。それとも、当該基準に定められた時期に聴取、回答を行えば十分か。
答; 第4項の「意見の聴取の状況」は、対価の額の算定について、従業者等から、その算定について意見、不服を聴くことを意味するが、個別の合意がなされることまで求められているものではない。意見聴取の結果として、合意に至っていなくても、その意見の聴取の状況として不合理性を否定する方向に働くものと考える。
  (次回に続く)
  以上
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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '05/2/28