改正特許法等の解説・2007〜特許制度の見直し・意匠制度の見直し
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2.意匠制度の見直し(1/2) | |
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(1)権利期間の延長 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1) 内容 @ 意匠権の存続期間を15年から20年に延長する(意匠法21条)。 A 16年〜20年分の登録料(印紙代)は、15年分と同額とする。意匠法42条1項3号(巻末の資料参照)。 |
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(2) 改正の理由 特許庁『改正法説明会テキスト』(以下、『テキスト』)によれば以下のようになっている。 優れたデザインのロングライフ商品や、リバイバル・ブームによって再度商品化されるものがあるなど、魅力あるデザインは長期にわたり付加価値の源泉となっており、また、意匠権の存続期間満了後に当該製品を模倣する事案も存在する。このため、意匠権を適切に保護するためには、現行の存続期間では不十分であるとの指摘があった。 |
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(3) 施行時期 @ 施行日(平成19年4月1日)以降の出願から適用される。 A 従って、現在権利存続中の意匠権は現行法どおり15年である。 尚、平成6年改正で特許権の存続期間を出願日から20年の1本化を図った改正では、係属中の出願や存続中の特許権に適用されたが、この場合とは取り扱いが異なるので、注意が必要である。平成6年改正ではTRIPS協定の遵守等の国際協調から特別の取り扱いがなされたものであった。 |
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(4) 参考事項 @ 図表3−1のように、意匠権の場合、存続期間満了時の現存率(※)は15.9%になっており、存続期間の延長を求めるニーズはあると思われる。 ※現存率=生存件数÷登録件数 【図表3−1】 特許庁『特許行政年次報告書2006年版』より作成
A 意匠権を初めとした工業所有権の存続期間は、意匠権者の利益と、意匠権に係る意匠を使いたいという利用者のバランスで、決めている。また、デザインの保護は各国の制度がまちまちであり、意匠法を採用する国においても、全面的又は一部に無審査制度を採用する国もあり、保護期間の起算日・長さも異なる(図表3−2)。国際的に見て日本の15年、20年の長短を一概には評価できない。 【図表3−2】 主要国の現行意匠法の概略
※存続期間の項中、(登)とは登縁日を、(出)とは出願日を、それぞれ存続期間の起算日とするものをいう。
また、「期間」の項において「延」とあるものは期間延長を示す。 ※「審査」の項中、○は「審査主義」を、×は「無審査主義」をとっていることを示す。 ※「登録表示」の項中、○は「要」を、×は「不要」を示す。 ※「備考」の項中、CDは共同体意匠(EU)の加盟国であることを示す。 ※特許庁『特許行政年次報告書2006年版』からデータを抜き出して筆者が作成したが、あくまで各国比較の参考程度に利用して頂きたい。従って、各国の制度を利用される際には改めてご相談ください。 |
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(2)画面デザインの保護の拡充 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1) 改正の内容 @ 物品がその本来的な機能を発揮できる状態にする際に必要とされる操作に使用される画面デザインについて、物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に含まれるものとして、保護する(意匠法2条2項)。また、当該画面デザインがその物品の表示部に表示されている場合だけでなく、同時に使用される別の物品の表示部に表示される場合も保護する。 A 条文 意匠法2条2項に「前項において、物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合には、物品の操作(当該物品がその機能を発揮できる状態にするために行われるものに限る。)の用に供される画像であって、当該物品又はこれと一体として用いられる物品に表示されるものが含まれるものとする。」を新設する。改正前2項を4項に移す。 B 『テキスト』によれば、下記図表3−3のように、部分意匠制度で保護される対象が拡大されるとしている。 |
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【図表3−3】
特許庁『改正法説明会テキスト』より |
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(2) 改正の理由 『テキスト』によれば、以下のようになっている。 昨今の情報技術の発展に伴い登場してきた画面デザインについては、当該物品に一般に期待される使用目的を実現するために必須であるものであっても、意匠法上、保護されないものとなっている。しかし、これが画面デザインを当該物品の一部として創作し、その創作に投資をしている企業等による製品開発の実情と合致しないものとなっていることから、こうした画面デザインについて、意匠権を取得することを可能とし、模倣被害を防止することが必要となってきている。 |
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(3) 施行時期 施行日(平成19年4月1日)以降の出願から適用される。 |
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(4) 参考事項 @ 難解な条文であるが、『テキスト』によれば、各用語が以下のように解釈されている。
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【図表3−4】
特許庁『改正法説明会テキスト』より |
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(3)意匠の類似の範囲の明確化 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1) 改正の内容 @ 意匠の類似判断は、需要者の視覚による美感に基づいて行うことを明確化し、これにより統一性をもった類否判断を可能とする。 A 条文 意匠法24条2項「登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美観に基づいて行うものとする。」を新設する。 |
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(2) 改正の理由 『テキスト』では以下のように説明されている。 @ 現行の意匠法において、2つの意匠が類似しているか否かの判断は、意匠の登録要件や意匠権の効力範囲を定める重要な要素となっている。具体的には、
A 最高裁判例においても、新規性の要件については、一般需要者の視点から見た美感の類否を判断するものとされており、意匠権の効力範囲については、一般需要者から見て登録意匠と類似の美感を生じしめる意匠に及ぶものとされている。
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(3) 施行時期 施行日(平成19年4月1日)から適用されるが、特許庁説明会では「施行日以降の出願に対してのみ適用される」と説明されている。 |
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(4) 参考事項 @ “類似”については、諸説あり、また、いずれの説によっても類否判断にあたって何らかの形で公知意匠を参酌する実務がなされており、“需要者の視点”とした場合に“公知意匠の参酌ができない”とする解釈もある。特許庁説明会では「確認的な改正であり、実務は変わらない」「意識的な拡張・縮小はない」と説明されており、今後の特許庁の審査基準と運用、司法の判断も待ちたい。 A また、今回の「類似意匠」の定義的規定が、意匠法2条ではなく同24条に規定されたことで、出願意匠にどう適用されるのかを疑問視する解釈もあるが、特許庁説明会では「法上の総ての類似概念に適用される」と説明されている。 |
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