改正特許法等の解説・2007

〜特許制度の見直し・意匠制度の見直し
    商標制度の見直し・模倣品対策の強化〜(4)

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  3.商標制度の見直し
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(1)小売業等の商標の保護の拡充
@ 現行制度では、小売業者の使用する商標は個別の商品と関連して使用される限りにおいて、商品に係る商標(以下「商品商標」と言う。)として保護されている。これに対して、商店の看板・ショッピングカート・従業員の制服等に使用される商標は、個別商品との具体的な関連性が少ないこと等から商品の出所を表示するものではなく、小売業者のサービス活動の出所を表示するととらえることができるものの、このようなサービス活動は、商標法による直接的な保護の対象となっていない。
 これは現行の商標法の下で、小売業者が提供している例えば、「売れ筋商品の選択」「商品の陳列・品揃え」「接客]「装飾包装」等の役務は、「商品の販売に付随して提供される付随的役務であり、かつ、当該サービスの対価の支払いは商品価格に転嫁して間接的に支払われて、直接的な対価の支払いが行われていないため、商標法上の役務には該当しない。」と解釈されてきたことに起因しており、裁判所においても同様の判断がなされていた(シャディ事件:平成11年(行ケ)第390号、ESPRIT事件:平成12年(行ケ)第105号)。

A 一方で、我が国も加盟するニース協定における国際分類では、第35類の注釈に、「この類には特に次のサービスを含む。」として、「他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)顧客がこれらの商品を見、かつ購入するために便宜を図ること。当該サービスは、小売店、卸売店、カタログの郵便による注文、又はウェブサイト・テレビショッピング番組などの電子メディアによって提供される場合がある。(以下略)」と示されているように、国際的には小売・卸売サービスを独立した役務として保護する傾向にあり、従来は小売などを独立したサービスと認めていなかった英国でも2000年10月から、欧州共同体商標意匠庁でも2001年3月からは小売業者の商標の保護を認めている。

B そこで、今回小売・卸売業者が提供するサービスのうち最終的な商品の譲渡に係る部分を除いた「小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益提供」の部分を役務商標として登録できるように措置する改正を行った。具体的に対象となる業者は、商品を取り扱い販売する小売及び卸売業に関するもので、デパート、コンビニエンスストアー、家電量販店等のいわゆる総合小売店や、靴屋、本屋、八百屋等の専門店において提供される顧客に対して行う便益の提供等が含まれる。また、通信販売事業者、インターネット販売事業者などによるものも含まれる。

 (2)改正の概要     

C この改正については、平成19年4月より施行されるが、改正法の円滑な導入と施行前の取引秩序維持等のために、附則にいくつかの措置が規定されている。

 <継続的使用権>
 改正法施行前の取引秩序を維持するため、改正法施行前から日本国内で不正競争の目的でなく小売・卸売サービス(以下「小売等サービス」という。)に使用されている商標は、他人が同一又は類似の小売等サービスを指定役務とする同一又は類似の商標について商標権を取得した場合でも、施行の際にその業務を行っている範囲内において、本改正法施行後も継続してその商標の使用をすることができる権利を認める(継続的使用権)。
 また、本改正法施行の際にその商標が需要者の間に広く認識されている場合には、施行の際に行っている業務の範囲に限定されることなくその商標を継続して使用できることとする。
 ただし、商品に係る商標権、小売等サービス以外の役務に係る商標権については、改正法により特段の影響を受けるとは考え難いので、ここで言う継続的使用権は認められない。
 一方で、継続的使用権を認めることに伴い、小売等のサービスについての商標権を取得した商標権者はその商標権の行使が制限されるため、継続的使用権を有する者の業務に係る役務と自己の業務に係る役務との混同を防止する表示の請求をすることができる(混同防止表示請求権)。  

 1−2. 小売商標等の保護に係る経過措置

 (1) 施行日

  改正法の公布の日から一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (2) 継続的使用権

  施行の際に小売サービスを行っている範囲内については、小売サービスについての
   登録商標があったとしても、継続して使用できることとする。

<出願日の特例>
 施行日後3ケ月間(特例期間)に出願された小売等サービスを指定する商標登録出願同士については、同日に出願されたものとして出願の処理を行う。
 商品に係る商標登録出願や小売等サービス以外の役務の商標登録出願との間では、特段の調整を図らず出願日を基準とした先後願関係について審査を行う。

<使用に基づ<特例>
 特例期間中に出願された小売等サービスを指定役務とする出願同士が競合する場合に、出願人 は、その出願した商標が本改正法施行前から日本国内で不正競争の目的でなく自己の業務に係る小売等サービスについて使用している商標について商標登録を受けようとするものであるときには、使用に基づく特例の適用を主張することができる。
 使用に基づく特例が適用される出願は、使用に基づく特例が適用されない出願に優先して登録を受けることができる。使用に基づく特例が適用される出願が複数ある場合、他人の周知・著名商標と抵触しない等の他の登録要件を満たす限りそれぞれを登録する(重複登録)。
 使用に基づく特例の主張は、同日出願の協議命令の応答期間中(通常40日)に、改正法施行前から自己の業務に係る小売等サービスに使用している商標であり、出願に係る小売等サービスがその使用に係る小売等サービスであることを証明する書面などを提出することによって行う。


 (3) 出願日の特例

  施行後3月間(特例期間)に出願された小売サービスを指定役務とする出願同士
  同日出願として審査を行う。

 (4) 使用に基づく特例

  出願日の特例の適用を受けた結果同日出願となった出願同士については、施行前
  から使用していた商標に係る出願を優先して登録することとする。
  使用していた者が複数ある場合は、重複して登録を行う。

<重複登録により生じる弊害防止措置>
 まず第1に、今改正法下の使用に基づく特例出願で生じる重複登録によって、重複登録の他方の商標権者等の登録商標の使用により業務上の利益が害されるおそれがある場合には、商標権者等は混同防止表示を付すべきことを請求する事ができる(商標法第24条の4の準用)。
 更に、重複登録に係る商標権者が不正競争の目的で自己の登録商標を使用して、重複登録の他方の商標権者等との間で出所の混同を生じさせた場合、何人も商標登録の取消審判を請求することができる(商標法第52条の2の準用)。

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(2)団体商標の主体の追加
 従来の団体商標制度の下では、民法第34条の規定により設立された社団法人、事業共同組合その他特別の法律により設立された組合のみが団体商標の商標登録出願をする事ができた。
 しかし、近年、商工会議所、商工会、NPO法人等についても、その構成員が扱う商品又はその構成員が提供する役務を他者の取り扱う商品又は他者が提供する役務と区別するために、その団体の商標をその構成員に共通して使用させている実態がある。また、公益法人制度改革の一環として社団法人は一般社団法人への移行が予定されており、又、中間法人についても、一般社団法人として団体商標を取得することができるようになる。
 そこで、団体商標の主体となり得る団体を、商工会議所、商工会、NPO法人等に拡大して、商工会議所等であっても団体商標の商標登録出願をする事ができるように改正された。
 特許庁によれば、団体の構成員が使用許諾を得ることなく使用権を与えられると言う団体商標制度のメリットに鑑み、団体の構成員が取り扱う商品又は団体の構成員が提供する役務の共通の特質を表示する商標について出願することが望ましいとされている。
 この主体が拡大するのは団体商標のみであって、地域団体商標の主体まで拡大するものではない。
 尚、この改正については、平成18年9月より既に施行されている。この改正の施行に伴い、付則等に規定はないが、平成18年9月以前に出願された商工会議所等の出願であっても、本法の規定に従って、変更出願と同時に一定の証明書を提出することで、団体商標の出願に変更が可能であるとされている。

 2. 団体商標の主体の拡大
 
団体商標について、広く社団(法人格を有しないもの及び会社を除く)も主体 となることを可能とする。(商標法第7条)

 団体商標の主体

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '10/6/14