改正特許法等の解説・2007

〜特許制度の見直し・意匠制度の見直し
    商標制度の見直し・模倣品対策の強化〜(3)

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  2.意匠制度の見直し(2/2)
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(4)部分意匠等の保護の見直し
(1) 改正の内容
@ 先願意匠の一部と同一又は類似である後願意匠を排除する意匠法3条の2の規定については、先願の意匠公報の発行までに、同一出願人が出願した場合には登録を受けられることとした。(図表3−5)
 
【図表3−5】
作成筆者

A 条文
 意匠法3条の2において、「ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であって、第20条第3項の規定により先の 登録意匠出願が掲載された意匠公報(同条第4項の規定により同条第3項第4号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願が あったときは、この限りでない。」を新たに加える。

(2) 改正の理由
 『テキスト』では、以下のように説明されている。
 「全体の意匠(又は部品・部分)」と、その「全体の意匠」を構成する部品や部分についての意匠を出願する場合、先願の意匠の一部と同一又は類似である後願の意匠は意匠法3条の2の規定により登録を受けることができなかった。このため、部品や部分意匠の意匠登録を受けるためには、全体の意匠の出願より先に出願するか同日に出願する必要があった。
 一方、デザインの開発上、製品全体のデザインが創作された時点では部品の詳細なデザインが決定していない場合など、部品や部分意匠の出願が間に合わず、意匠権を取得できない場合が生じている。このため、自己の出願意匠の後願意匠となる部品の意匠や部分意匠についても意匠登録を可能とすることで模倣被害を防止したいとの要請がある。
 

(3) 施行時期
@ 施行日(平成19年4月1日)以降の出願から適用される。

A 特許庁説明会では「意匠法3条の2の後願に当たる出願(審査対象の出願)が施行日以降の場合に適用される」と説明されている。
 

(4) 参考事項
@ 『テキスト』では、先願の公報が当初の公報発行時点では公知とならない秘密意匠(意匠法14条)における部品・部分意匠の出願可能時期についても、通常意匠と同時期である最初の公報発行の前日までとする、としている。

A 意匠法3条の2の条文上「創作者同一」は規定していなく、また、特許庁説明会では「後願の出願の査定時に先願の出願人と同一か否かを判断する」と説明されており、同趣旨の規定である特許法29条の2の規定・取り扱いが異なるので注意を要する。
 

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(5)関連意匠制度の見直し
(1) 改正の内容
@ 本意匠の公報発行日の前日までの間にされた出願について、関連意匠の登録を認める(10条1項)。ただし、すでに専用実施権が設定された本意匠については、関連意匠の登録を認めない(10条2項)。(図表3−6)

【図表3−6】
作成筆者

A 条文
 10条1項で、「本意匠」を「・・・自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(以下「本意匠」という。)・・・」として自己の登録意匠を加えた。そして、「・・・関連意匠の意匠登録出願の日・・・がその本意匠の意匠登録出願の日以降であって、第20条第3項の規定によりその本意匠の登録出願が掲載された意匠公報(同条第4項の規定により同条第3項第4号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前である場合に限り、第9条第1項又は第2項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができる。」と規定した。
 また、10条2項で、「本意匠の意匠権について専用実施権が設定されているときは、その本意匠権に係る関連意匠については、前項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。」を新たに規定した。10条2項の新設に伴い、改正前2項、3項が夫々3項、4項に繰り下げられた。
 尚、新設の10条2項は拒絶理由である(17条1項)。

(2) 改正の理由
 『テキスト』では、以下のように説明されている。

@ 昨今の企業における商品開発は、開発当初から全てのバリエーションを創作する場合に限らず、当初製品投入後に追加的にデザイン・バリエーションを開発するなど多様化しつつある。また、本意匠と同日出願の場合にのみ関連意匠の出願を認める現行制度下にあっては、市場投入が予測される全てのデザイン・バリエーションについての図面や資料等を当初出願時に準備しなければならず、当面の実施製品に係る意匠から先行して出願するなどの柔軟な出願方法に対応できないとの指摘がある。

A また、本意匠、関連意匠の意匠権についての専用実施権は全ての意匠について同一の者に対して同時に設定しなければならないことから(意匠法27条1項)、すでに専用実施権が設定された本意匠についての関連意匠の登録はできない(意匠法10条2項)。
 

(3) 施行時期
@ 施行日(平成19年4月1日)以降の出願から適用される。

A 尚、特許庁説明会では「本意匠の出願日は施行日前であっても関連意匠の出願日が施行日以降であれば、適用される」と説明されている。
 

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(6)秘密意匠の保護の拡充
(1) 改正の内容
@ 秘密意匠の請求ができる時期について、(従来は出願と同時に行う場合に限られていたが)出願と同時に加え、第1年分の登録科の納付(意匠法20条2項)と同時に行う場合も認めることとした。

A 条文
 意匠法14条2項で「・・・書面を意匠登録出願と同時に、又は第42条第1項の規定による第1年分の登録料の納付と同時に・・・ 」とした。

(2) 改正の理由
 『テキスト』では、以下のように説明されている。
 登録意匠は意匠登録後に発行される意匠公報によって公開されることから、権利者が商品化する前に模倣品が発生することを防止するため、現行制度では、出願と同時に秘密意匠の請求をすることにより、意匠登録後に発行される意匠公報では、当該登録意匠(図面又は写真等)を公開せず、登録意匠の公開時期については最大3年間の猶予を得ることができる(意匠法14条、20条)。
 一方、審査期間が短縮してきており、出願当初は秘密意匠の請求は不要と判断していたものの、審査が早く終了したため、商品化の前ににもかかわらず、意匠公報の発行によって、登録意匠が公開され、商品の広告・販売戦略などに支障が出る場合が生じている。このため、審査の終了後であって、意匠登録前に秘密意匠の請求を行うことを可能とするべきとの指摘があった、としている。

(3) 施行時期
@ 施行日(平成19年4月1日)以降の出願から適用される。

A 特許庁説明会では、登録料納付時が施行日以降であっても、出願が施行日前であれば適用されない、と説明されている。

(4) 参考事項
@ 『テキスト』では、登録料の納付は本人に限られないため、第三者が登録料を納付する場合も考えられ、その結果、秘密請求をする機会を逃すことがないように留意する必要がある。早期公開を避けたい意匠については、可能な限り出願と同時に秘密意匠の請求を行うことが望ましい。としている。

A 尚、意匠法14条3項に改正はないので、「秘密を請求した期間(3年限度)」を延長又は短縮することは、従前通り、いつでも可能である。

B 秘密意匠制度については、下記図表3−7のように近年利用が増加しており、秘密意匠による保護強化を求めるニーズはあると思われる。

【図表3−7】  
意匠登録出願種別出願件数




出願の年 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005
通常 30,341 30,042 29,512 37,169 37,388 38,331 36,680 38,273 39,569 37,778
秘密 80 76 74 84 745 813 270 705 789 1,088
類似 9,513 9,422 9,443 0 21 3 3 0 2 3
類似秘密 25 20 65 0 0 0 0 0 0 0
分割 88 85 82 50 210 158 148 160 239 206
変更 128 199 152 56 98 80 95 97 141 154
却下後 17 21 24 9 34 38 34 32 16 25
40,192 39,865 39,352 37,368 38,496 39、423 37,230 39,267 40,756 39,254
特許庁『特許行政年次報告書2006年版』より

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(7)新規性喪失の例外の適用規定の見直し
(1) 改正の内容
 新規性喪失の例外の適用を受けるために必要な証明書類の提出期限について、現行法において、「出願の日から14日以内」とされているのを「出願の日から30日以内」に延長する(意匠法4条3項)。

(2) 改正の理由
 『テキスト』では、以下のように説明されている。
 意匠法では、出願前に国内又は海外で公然知られた意匠又はこれに類似する意匠等は新規性の要件を満たさないことから意匠登録を受けられないが(意匠法3条。新規性喪失)、出願日から遡って6ヶ月間に意匠登録を受ける権利を有する者が意匠を公開した場合は、それにより出願意匠の新規性等が喪失されないものとして取り扱うこととしている(意匠法4条。新規性喪失の例外)。現行法意匠法では、当該例外の適用を受けるためには、出願時にその旨を願書に記載し、出願日から14日以内に適用の要件を満たす事実を証明する書面を提出することが必要となっている。
 近年、企業の製品開発の活発化に伴い、出願前に自ら意匠を公開する場合が増加しているが、本規定の適用を受けるために、公開事実について第三者からの証明を取得することに時間を要することから、証明書類の準備期間が不十分であるとの指摘があった。

(3) 施行時期
 施行日(平成18年9月1日)以降の出願から適用される(既に施行されている)。

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鈴木正次特許事務所

最終更新日 '10/6/14