改正特許法等の解説・2010〜特許制度をめぐる検討状況、
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1.特許制度研究会で検討されている内容の紹介<(2/3) | |
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(4)迅速・効率的な紛争解決について(1) (平成21年5月29日 第4回) | ||
A.特許に係る紛争処理制度 | ||
【無効審判制度】
特許権は特許庁の審査を経て設定されたものであるが、その有効性に疑義がある場合は、何人も特許の無効を求めて無効審判の請求をすることができることとされている(特許法第123条)。無効審判は、特許庁審判部において審理され、当事者が申し立てない理由についても審判官の職権により審理が可能である。無効審決が確定すると、特許権は初めから存在しなかったものとみなされる。また、審判の結果である審決に不服がある場合は、知財高裁に審決取消訴訟を提起することができる。 【特許の有効性判断の「ダブルトラック」化】 2004年に新設され2005年4月に施行された特許法第104条の3の規定により、侵害訴訟において特許の有効性の判断を行うことが可能となった。このため、紛争処理における特許の有効性判断が「無効審判ルート」と「侵害訴訟ルート」の二つの場で行われ得るという、いわゆる「ダブルトラック」の状況となっている。 【迅速・効率的な紛争解決への課題】 無効審判ルートと侵害訴訟ルートをめぐる諸課題を精査し、迅速・効率的な紛争解決のための制度の在り方について検討すべきであると考えられる。 |
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B.特許の有効性を巡る紛争解決における検討課題 | ||
【ダブルトラックによる対応負担・判断齟齬について】
無効審判・侵害訴訟の2つのルートで特許の有効性が同時に争われ得ることについては、当事者の対応負担が重いとの指摘があるとともに、両ルートで特許の有効無効の判断結果の齟齬が生じ得ることの是非を問う声もある。また、裁判所では、特許の有効性判断や技術的争点の整理・判断について「調査官制度」及び「専門委員制度」を活用することで対応しているが、裁判所の更なる技術専門性の強化を望む声がある。 特許の有効性判断の2つのルートについては何らかの整理をすべきか否かを検討する必要があると考えられる。また、裁判所における特許の有効性の判断において特許庁の知見を活用する仕組みや、裁判所が公衆の意見を聴取することを可能とする手続の導入の要否について検討するべきであると考えられる。 【特許の有効性を巡る紛争の蒸し返しについて】 侵害訴訟ルートにおいて判決が確定した後に、特許の有効性について無効審判ルート等で争われた場合は、侵害訴訟ルートとは異なる判断を下した無効審判や訂正審判の審決が確定することにより、以下のような紛争の蒸し返しが生じ得る状況になっている。このような紛争の蒸し返しを封じるための方策について、検討する必要があると考えられる。 被疑侵害者による蒸し返し 侵害訴訟において、特許権者の差止め等の請求を認容する判決が確定しても、その後に被疑侵害者が請求した無効審判において、無効審決が確定した場合、民事訴訟法上の再審事由に該当するとされる。再審の結果、先の侵害訴訟の確定判決が取り消された場合、受け取った損害賠償金が不当利得となり特許権者は利子を付けて返還する義務が生じる可能性がある。 特許権者による蒸し返し 侵害訴訟において、被疑侵害者による無効抗弁が認容され、特許権者の請求を棄却する判決が確定しても、その後、特許権者が訂正審判(又は無効審判手続中の訂正)を請求し、訂正を認める審決が確定して特許が有効とされた場合、民事訴訟法上の再審事由に該当する可能性がある。再審の結果、先の侵害訴訟の確定判決が取り消された場合、被疑侵害者は損害賠償等を命じられる可能性がある。 無効審判ルートの在り方について 現行の無効審判制度においては、同一人が何度でも複数の無効審判を行うことができる。このため、無効理由が異なる複数の無効審判が請求されることにより、特許の有効性の判断結果が最終的に確定するまでに相当の期間を要する。 特許付与後も特許請求の範囲等を訂正できる機会が多く、訂正の度に権利の客体が変更されるために、審理をやり直す必要が生じ得る。無効審判の審決取消訴訟においては、無効審判の手続で審理・判断されなかった公知事実との対比における無効原因の主張はできないと解されている。このため、訂正審判の請求や新たな証拠に基づく無効理由の主張が行われた審決取消訴訟においては、知財高裁が事件を特許庁に差し戻すこととなり、知財高裁と特許庁との間で事件が行き来することが繰り返される事態が生じていることへの批判の声がある。 無効審判は特許庁が行うものであるが、特許庁は審決取消訴訟の被告にならないことから、例えば、当事者が審決の内容を十分に理解できない場合等には適切な主張・立証が困難となることがあるとの指摘がある。 |
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(5)迅速・効率的な紛争解決について(2) (平成21年7月6日 第5回) | ||
A.紛争処理制度の在り方の包括的な検討 | ||
特許に係る紛争を迅速・効率的に解決することができれば、発明が適切に保護されると同時に、制度利用者が紛争処理に投じるコストを最小限とし、有限のリソースを研究開発に充てることが可能となり、イノベーションの促進に寄与することとなる。
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B.紛争処理制度の在り方に関する検討課題 | ||
前回(第4回研究会)は、特許の有効性判断におけるダブルトラック等に起因する諸問題をめぐる紛争処理手続の在り方について検討を行った。今般の研究会においては、このうち、技術的争点に関する的確な判断を支える制度整備、審決の確定・訂正の許否判断の在り方、及び無効審判の確定審決の第三者効について検討する。
【技術的争点に関する的確な判断を支える制度整備について】 裁判所と特許庁において技術の流れ・相場観を共有できれば、技術的争点の判断の信頼性を一層高めることができるのではないかと考えられる。 現行体制では必ずしも得られない、具体的な事件ごとの技術専門的知識についてのサポートを臨機応変に行い得る体制を構築することを検討すべきであると考えられる。 【審決の確定・訂正の許否判断の在り方について】 無効審判の審決の確定と訂正の許否判断の際に、特許全体を一体不可分として扱うことと請求項ごとの扱いとすることの、いずれが適切と考えられるかについて、検討すべきであると考えられる。また、仮に請求項ごとの扱いとする場合には、確定した訂正の内容をその都度、明確かつ早期に公示する制度の導入についても、併せて検討すべきであると考えられる。 【無効審判の確定審決の第三者効(特許法第167条)について】 現行の無効審判制度においては、同様の主張に基づく審判手続の繰り返しを防止し特許権者の対応負担を軽減するため、有効審決の確定登録後は、何人も同一事実・同一証拠に基づいて無効審判を請求することはできないとされている(特許法第167条)。 第三者の権利保護と特許権者の対応負担軽減とのバランスや、無効審判制度の重要な意義である公益性と紛争解決の効率性とのバランス等を考慮しつつ、同一の事実及び証拠に基づく審判請求の取扱いについて検討する必要があると考えられる。 |
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