改正特許法等の解説・2010〜特許制度をめぐる検討状況、
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3.新しいタイプの商標の保護 | |
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(1)新しい商標に関する検討ワーキンググループ報告書について |
平成20年6月10日に開催された第19回の産業構造審議会商標制度小委員会で、「新しい商標に関する検討ワーキンググループ」の立ち上げが了承された。その後5回にわたって検討を積み重ね報告書が作成され、本年10月5日に再開された第20回産業構造審議会商標制度小委員会に報告された。以下ワーキンググループ報告書の内容を概説する。
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A.新受件数 |
我が国の商標法は、文字や図形等からなる伝統的な商標を保護対象としているところ、(1) インターネットの普及等による商品・役務の販売戦略の多様化等を背景とした、新しいタイプの商標の利用の拡大、(2) 新しいタイプの商標に関する諸外国における保護の動きの広がりや国際的な議論の進展等の状況を踏まえ、動きや音等からなる新しいタイプの商標の保護の在り方について検討された。
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B.報告のポイント |
商標権は排他独占的な権利であり、その権利範囲が明確に特定される必要があることから、国際的な議論等も踏まえ、以下の商標を保護対象に追加することが適切とされた。
また、動きや音等の商標の追加に対応し、商標の特定方法として、従来の紙による特定に加え、電子ファイルによる特定を可能とすること、更に、視認できない商標を含む新しいタイプの商標の追加に対応し、商標の登録要件等について、(1) 位置や音等によって、需要者が何人かの業務に係る商品・役務であることを認識することができる場合に、商標の登録を認めることとする、(2) 緊急用のサイレンや国歌等の公益的な音の商標について、一私人に独占させることが適当でないため、商標の登録を認めないこととする等、所要の規定の整備を行うことが適切とされた。 |
C.今後の動向 |
この報告をうけて、動きの商標、ホログラムの商標、輪郭のない色彩の商標、位置商標、音の商標については、商標法の改正、審査基準の作成等の法的整備にはいることが予想される。しかし、新しい商標の保護の必要性について産業界から疑問を呈する意見もあり、今後の産業構造審議会商標制度小委員会のすすみ具合が注目される。
以下に特許庁ホームページに掲載されている「諸外国における新しいタイプの商標の例」(産業構造審議会知的財産政策部会 第20回商標制度小委員会 議事次第・配布資料一覧の「資料2−2 新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書【概要】」を紹介する。 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/t_mark_paper20.htm |
諸外国における新しいタイプの商標の例
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(2)歴史上の人物からなる商標登録出願の取扱い |
周知・著名な歴史上の人物名は、その人物の名声により強い顧客吸引力を有し、その人物の郷土やゆかりの地においては、住民に郷土の偉人として敬愛の情をもって親しまれてきたため、例えば、地方公共団体や商工会議所等の公益的な機関が、その業績を称え記念館を運営していたり、地元のシンボルとして地域興しや観光振興のために人物名を商標として使用したりするような実情が多くみられ、当該人物が商品又は役務と密接な関係にある場合はもちろん、商品又は役務との関係が希薄な場合であっても、当該地域においては強い顧客吸引力を発揮すると考えられる。このため、周知・著名な歴史上の人物名を商標として使用したいとする者も、少なくないものと考えられる。一方、敬愛の情をもって親しまれているからこそ、その商標登録に対しては、国民又は地域住民全体の反発も否定できない。
このような諸事情の下、周知・著名な歴史上の人物名についての商標登録に対しては、公正な取引秩序を乱し、公序良俗を害するおそれがあるとの懸念が指摘されていた。係る事情から産業構造審議会商標制度小委員会でも何らかの対応が必要との意見のもと、法改正、審査基準の改定等様々な検討がなされた結果、平成21年10月に以下のように審査便覧の改訂を行うことで一応の決着を見ることとなった。今後は、出願審査の動向が注目されるところである。以下改訂された審査便覧の抜粋を掲載する。 【審査便覧の抜粋】 歴史上の人物名からなる商標登録出願の審査においては、商標の構成自体がそうでなくとも、商標の使用や登録が社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も商標法第4条第1項第7号に該当し得ることに特に留意するものとし、 (1) 当該歴史上の人物の周知・著名性、(2) 当該歴史上の人物名に対する国民又は地域住民の認識、(3) 当該歴史上の人物名の利用状況、(4) 当該歴史上の人物名の利用状況と指定商品・役務との関係、(5) 出願の経緯・目的・理由、(6) 当該歴史上の人物と出願人との関係等を総合的に勘案して同号に該当するか否かを判断することとする。 また、上記に係る審査において、特に「歴史上の人物の名称を使用した公益的な施策等に便乗し、その遂行を阻害し、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、利益の独占を図る意図をもってした商標登録出願」と認められるものについては、公正な競業秩序を害するものであって、社会公共の利益に反するものであるとして、商標法第4条第1項第7号に該当するものとする。 |
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(3)「類似商品・役務審査基準(ニース分類第10版)」の見直し況 |
A.経緯 |
「類似商品・役務審査基準(以下、「類似基準」という。)」については、「商標制度の在り方について」(平成18年2月産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会報告書)及び知的財産推進計画2006〜2009において、経済の実態や取引の実情に合致したものとするために必要な見直しを行うよう要請されてきたところである。
第19回商標制度小委員会において了承された「類似基準」の見直しに係るスケジュールの一環として、昨年度、調査研究を行い、基本的な見直しの方向性について報告を得ている。
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B.現状 |
現在、A.の調査研究によって報告された基本的な見直しの方向性に則して、類似基準の改正案を検討している。なお、現時点における検討では、全体で約60以上の類似関係の変更が必要と考えらえる。また、類似関係を変更した場合、登録商標に付されているデータも変更が必要なところ、これらと関連する登録商標が約70万件となり、データ整備が必要なこれらの指定商品・役務の数も約660万個と予想される。今後、これらのデータ整備を行うには、相当の作業期間が必要と考えられる。
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C.今後の進め方 |
今般、以下の基本的な方向性について産業構造審議会商標制度小委員会で審議し、小委員会における意見を踏まえ、基本的な方向性に則した類似基準の改正案を作成して、パブリックコメントを経て具体的類似範囲を決定し、スケジュールにしたがって、その後の作業を行うこととする。また、作業に当たっては、(1) 複数の類に及ぶ類似関係については、特に、現在も類似関係にあるか詳細に見直しを図り、類似関係や取引実態が希薄なものと判断される場合は例示から削除する等により、複数の類に及ぶ類似関係の縮小を図る。(2) 類似基準の見直しによって、これまで登録できていたものが、他人の権利と類似することとなり登録できなくなるような見直しについては、企業のブランド戦略に支障が生じないよう、業界の意向や審判決の動向を踏まえ、必要最小限の範囲にとどめる。(3) 新類似基準の導入にあたっては、原則として出願日を基準に適用をしつつ、審査の過程において出願人から類似しないとの主張及び立証があった場合は、当該取引実情を参考にして類否判断を行う様に留意する。
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(4)今後の動向(不使用取消審判促進、著名商標保護、異議制度の見直し、登録申請における設定登録日の取扱い等) |
産業構造審議会商標制度小委員会では、検討課題として以下のA乃至Eの項目が挙げられており、日本弁理士会の商標委員会においても各項目について意見のとりまとめの準備作業がなされている。
また、登録申請における設定登録日の取扱いについては、日本商標協会から設定登録日の復活を求める要望書が出されており、これに対し特許庁内部で対応について検討中との情報があり、今後の特許庁の対応の発表が待たれるところである。 |
A.著名商標の保護の在り方 |
著名商標の商標権の効力について、混同を生ずるおそれのある非類似の商品・役務まで禁止的効力を拡大すること、混同の有無に関係なく著名商標が希釈化される場合に禁止的効力を認めること等の検討(防護標章制度の見直しを含む。)。
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B.登録後に普通名称となった商標の取消制度等の創設 |
登録後に事後的に普通名称として需要者に認識されるようになった登録商標を取り消す制度の導入等の検討。
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C.国内外の周知な地名の不登録事由への追加 |
本来的に出所表示機能が弱い地名が商標として登録されることを排除するため、国内外の周知な地名を不登録事由として追加することについて検討。
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D.登録異議申立制度の見直し |
平成15年の法改正によって異議申立制度を無効審判制度に吸収統合した特許制度での運用状況等を把握した上で、商標制度における両制度の役割分担・機能を整理し、両制度の統合整理、無効審判制度の請求人適格拡大等について検討。
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E.商標権消滅後1年間の他人の商標登録排除規定の見直し |
先行する既登録商標の商標権が消滅した場合でも、その権利消滅後1年間、後願商標の審査を待たなければならない現行法4条1項13号の在り方について、早期権利化の観点から検討。
以上
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