判例アラカルト
(2000年〜2001年の判決から)

   はじめに
 今や世界各国の政治経済は著しい変動を続けつつあると共に、益々その加速度を加えている現況であるが、我が国にあってもその例外ではない。昨今の1年の経過はもはや過去10年以上に当たるとしても過言ではあるまい。知的所有権の世界もこの影響を大きく被っている。一方、知的所有権の対応法制は目まぐるしく改正・施行されつつあり、10年前と比較すれば、隔世の観がある程である。
 一方、経済の激変と知的所有権尊重の風潮は、自由経済における技術的規制にも真正面から衝突し、権利主張とその限界を見究めるべく司法の立場も大幅な変革を余儀なくされ、事件の調査処理の迅速化と精確な判断という相反する狭間に苦闘している現状である。
 しかしながら、知的所有権関係法令が毎年の如く改正されても、なお現社会の要請とは乖離するものがあり、法制と現実との調整判断を司法の苦悩によって解決するには著しい限界があるけれども、法制は常に現実を追いかけ、時には現実に歯止めを掛ける立場にあるわけで、前記法制と現実との乖離を少しでも真実の解決に近づけるためには、知的所有権関係者一同の真摯な努力と万全の協力が必要不可欠である。そこで2000年乃至2001年の判決中から、今後の参考の一助になることを希求して、ここにまとめた。
 従って、ここに摘記された10件の判例は、必ずしも精選された内容でなく、かつあまりにも簡単にすぎる思いをなしとしないけれども、今後研究幇助されるための一助、あるいは問題解決を模索するための端緒ともなれば望外の喜びとするところである。


  目次
  はじめに
1.無効となることが明らかな特許権に基づく権利行使と権利濫用
2.形式的に技術的事項が一致する場合の発明の容易性
3.特許権侵害における主張と立証の問題点
4.職務発明における相当の対価
5.方法の特許に使用する物の国内製造と方法の国外実施
6.特許法102条2項における算出利益の意義
7.いわゆる真正商品の並行輸入における輸入者の注意義務
8.競走馬にパブリシティ権が認められるか
9.原材料表示の中に他人の登録商標を含むラベルの使用
10.不正競争防止法で規制されたドメイン名の使用


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鈴木正次特許事務所